ちょっと一息、つきませんか?

津和野で商売をしていますと、沢山の観光客の方がお店に来られます。それと同時に、もちろん地元の方もよく利用してくださいます。我々はこういった方々に支えられて商売をしているわけですが、観光で来られた方と地元の方では、当店にお越しになる目的が違います。

まず、観光で来られる人は、第一の目的がお土産でしょう。親族や会社の方などへ配られるのではないでしょうか、沢山のお菓子を買っていかれます。主に源氏巻が多いですね。

地元の方は、主にお使い物で詰め合わせなどを買っていかれる場合が多いでしょうか。お中元やお歳暮などに利用する方もいます。

観光客の方はお土産、地元の方はお使い物と、どちらの場合も自分達で食べるのではなく、他の方への贈り物という場合に当店で買い物をされることが多いのはやはり、和菓子が高級品と言うイメージがあるからでしょうか。ただ、最近はこのような買い物にも変化が見られるようになりました。

観光で来られる方の中にも、大量のお土産を買う人がだんだん少なくなっています。特に若い方がそうなのですが、自分達で食べる分を少量買われるか店内で食べて帰られる人が増えています。地元の人たちの中でも、お中元やお歳暮を大量に贈る方の数は年々減っていますね。

こういった変化の原因は、最近よく耳にする「デフレ」も関係あると思うのですが、それ以上に日本人の生活の変化が現れてきているのではないか、と思うのです。

今の日本はそれまでの生活基盤であった共同体が崩壊しているといわれます。地方や農村部では今だ人々が地域で共同し助け合って生活する姿が見れます。しかし、都市部などでは隣に誰が住んでいるのか分からないと言うことがよく起こると言われます。

人々の生活が便利になった現代では、特に地域を中心としたコミュニティーを作り助け合わなくとも、一人で十分生きて行けるようになりました。そうなると当然、周りの人との交流も減りますし、時に煩わしさを含む人付き合いを避ける人も当然出てくると思われます。そうして少しずつ日本古来の生活共同体がなくなってしまったのでしょう。特に若い人の間では人と人との横のつながりという意識が特に希薄になっているようです。

このような変化をどう評価するかは、各人によって違ってくるでしょう。とくに和菓子屋である我々が「こうあるべきだ」と言うつもりもありません。ただ、我々に分かっているのはこの日本人の生活の変化が、確実に我々の商売にも影響しているということです。

和菓子は高級品で贈り物にするもの、という考え方が定着しています。ということは、これまでのような人付き合いがなくなれば、当然お土産や中元・歳暮を贈るという習慣もなくなります。結果として、お客様の足は店から遠のいてしまいます。少なからず、当店にもこれらの影響はありました。 しかし、

我々は昔から、和菓子は実はもっと身近な食べ物であべきだと考えていました。もっと食べるために買っていただけたら、と思っていたんです。そういう意味も込めて、もうご存知の方も多いと思いますが、当店には昔から店内に一息ついていただける場所を設けてあります。観光でこられたときも、ちょっとしたの買い物の時でも結構です、気軽にこのスペースをお使いください。買ったお菓子をその場で召し上がって一息ついてください。もちろん、大福一つだけ食べに来たのだけれども、という方でも大歓迎です。店員一同お待ちしております。

2002年10月1日(火)
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