さて、これまで包装の事などを中心にお話してまいりました。
今まで申し上げたとおり和菓子と包装は切っても切れない関係にあります。一つ一つのお菓子を包む紙から、それらを詰め合わせにしたときに入れる化粧箱まで。洋菓子とは違い、それら全てを含めたものが和菓子なのだというイメージを持っている方も多いことでしょう。
華やかな包装も和菓子の一部になっていれば当然、当店も箱屋さんや包装資材を取り扱う業者さんなしにしては商売が成り立たちません。新しいお菓子が出来たときや、今までのイメージを一新したいときなど、デザイナーさんや箱屋さんと一緒に包装形態を考えます。
最近包装を変えたものの一つに棹物六種があります。羊羹や花茜などの商品なのですが、これら棹物実は以前から大きすぎるのではないかという意見がありました。確かに普通の羊羹の大きさはどう考えても四人から五人で食べるのにちょうどいいサイズです。最近の家庭は人数が少ないのに加え、一人で羊羹を食べたいときなど、あの大きさの羊羹にはちょっと手が出ないのではないか。そういう意見から、この度棹物のサイズを従来の半分の大きさにしたんです。それと同時にデザインも一新したのですが、この新しいパッケージにしてから非常に評判がよく商品がよく出るようになりました。
我々が箱屋さんに対してお願いをするのは何も、新しい商品を作ったときだけではありません。
先日、美味しいお菓子を適切な価格で提供するために、包装にかかるコストをなるべく抑えるようにしている、とお話したのを覚えていらっしゃいますでしょうか。安全で良い原材料の費用、手間のかかる仕事をする職人の人件費。美味しいお菓子を作るには、これらの費用を削ることができません。それゆえ、包装にかかるコストを出来るだけ削減しお菓子全体の値段を安く抑えるよう努力している、とお伝えいたしました。
この件ではいつも業者の方を悩ませていることでしょう。箱にかかる費用を半額にしてくれとお願いしたこともあります。言うのは簡単ですが言われるほうは本当に大変だと思います。
最近は景気の関係で以前では考えられないくらいの値で卸してくださる業者の方もいます。しかし矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、我々は安すぎるのはあまり良い事ではないとも考えます。
安過ぎるかどうかの判断基準は、その値段の根拠ですね。例えば、作業効率の良い機械を導入したと言うような構造改革の結果の値下げなら根拠があると我々は考えます。しかし、単純に売りたいがために値を下げただけだと根拠はないと判断します。
なぜ根拠がないといけないのか。これは例えば原価を削って商品を安くしたとすれば、単純に考えてその削った部分を補うためにさらに多くの仕事を確保せねばならず、その結果一つの仕事に割り当てられる時間は少なくなり、質が悪くなるというようなことが起こりうるのではないか、と思うからです。そういう事態を避けるためにも、払うべきものを払うということは必要だと思います。
箱を作るとき何が必要でどこに安くする余地があるのか。我々はそのことを常に業者の方と話をします。印刷方法、色の種類、箱の形状から大きさまで、色々な可能性を探り何が必要で何が必要でないかを判断する。それが出来て初めて安くて良いものができるのではないでしょうか。必要経費を削ってまで値段を下げるのは問題だけれども安くする努力は常に怠ってはならない。そういつも心がけながら、仕事をしています。
本店の店員より