鯉の里の大きさが違うんですけれど、と言う問い合わせがよくあります。
大きさが違うというのは、少々大げさな言い方ですが、鯉の里の厚みが違うということは、実はよくあることなんです。
この原因は、別に手抜きをしているわけでも、材料を倹約しているわけでも何でもありません。ただ単に、手作りだから起こることなのです。では、なぜ手作りならばこのようなことが起こるのか。 その理由は・・・ すいません。ここは鯉の里づくりの秘伝に関係してきますので、ここで公表す るわけにはいきません。
大変申し訳ございません。
ただ、この鯉の里の厚みの問題は、小林会長が鯉の里を作っていた当時からありました。会長の時代から今の工場長までいろいろと工夫はしてみたのですが 解決策はなく、出た結論が、おいしい鯉の里は厚みにばらつきがでてしまう、 と言うことでした。
職人と言われる人の多くはカンで仕事をします。このカン、非科学的な言葉に聞こえるかもしれませんが、実は非常に優れた感覚なのではと思うことが最近 あります。 菓子づくりとは、数値で表せられないもの、マニュアルにできないものです。
確かに、粉や砂糖の分量や、作り方の手順などは書き留められるし、それはマ ニュアルに違いありません。ただ、職人が書いた物を見てお菓子を作ったとし ても、職人が作った物を全く同じ物はできません。何故ならそこには「カン」 が含まれてないからです。 ではカンとは何か。
言葉で表すのは難しいのですが、職人は毎日同じお菓子を 作ります。同じお菓子を作ると言えど、毎日毎日の条件は変わってくるわけで す。例えば気温、湿度から始まって、豆の状態、この季節なら新豆になります ので、また水分量が変わってきますし、煮え方もまた違ってきます。寒天も作 る釜の状態によって微妙な違いが出てきます。極端な話、二度と同じ状態はな いわけです。
同じ状態はないけれども、職人はプロですので同じ品質の物を毎日作り出さな ければならない。そこでどうするのかと言えば、職人は過去の自分の経験を基 に水の量・温度、豆を煮る時間や、寒天の量などを調節し毎日違う条件で、毎 日同じ品質の物を作り出しているのです。
ここの部分の作業を数値に表したり、マニュアル化したりすることは不可能で はないと思います。例えば、気温が何度であればこういう手順を踏むとか、収穫されて何日後の豆は何時間煮るとか、寒天の強度・粘度がこれくらいであれ ば加える寒天の量はこれくらいという具合です。
しかし、このようなマニュアルを見ながら菓子などとうてい作れないし、マニ ュアルを読んでいる間にまた条件は変わってしまうでしょう。職人はこのデー タにすれば恐ろしく多くなる情報量を体で受け取り、それを瞬時に処理して品 質を管理しているといえます。 今はこの「カン」の全てを、鯉の里の品質の方に向けています。
もちろんこの 「カン」を、大きさを揃えるという方向にむければ、大きさの同じ鯉の里を作 ることはできます。ただし、味の方は大きく変わってしまうことでしょう。今 ある味を最優先すれば今まで通り大きさのばらつきは出てきます。
これは最初 にも言いましたが、鯉の里作りの秘伝の部分大きく関係しているからなのです。 美味しいものを作るということに全神経を集中させ良い品質のものを作るれば 作るほど、大きさは不揃いになってしまいます。ここの部分を説明できないの が非常にもどかしいのですが、そういうことだとご理解いただければと思います。
ご迷惑をおかけしますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
本店の店員より