機械屋さん

先日、菓子屋などが使う機械メーカーの人が営業に来ました。

で、相手に無駄な時間を取らせてはいけないので、最初にはっきりと「味が落ちるようなら絶対に使いません」と言ったのですが、まあこの人聞いているのかいないのか、こっちの意見はそっちのけで今何が売れているのかという話を始めるのです。

最初はフンフンと話を聞いていました。今は生クリームを使った大福が売れていて、ここでこういった大福を作っていますとか、ここではこんなものを使って大福を作っていますとか、そういう話をしてくるんですよね。

実は自分も最近、えらい生クリームを使った大福が多いなぁ、と思っていたんです。恐らく読者の方もそうだと思うのですが、この生クリーム大福が大増殖した裏には、実はこの機械メーカーの伝道があったからだ、というのがようやくここで理解できました。

和菓子屋はもとより、パン屋でもこの生クリーム入りの大福を売っている時代です。パン屋で使う包餡機でも、恐らくこの大福が作れるのだと思います。作り方は機械メーカーの方が指導されたのではないかと推測します。

今は、機械メーカーも不況で大変なのだと思います。菓子屋が儲からなければもちろん機械も売れませんからね。そういうことで、機械メーカーがある種コンサルタント的な仕事も始めたのでしょう。売れる菓子を紹介し、自社の機械を使って作り方を教え、機械を売ると。それで結果として菓子屋も儲ければ、菓子屋も言うことはありません。

しかし話を聞いているうちに、この機械屋が段々と怖くなってきました。

ここではこんな菓子を作っていて、これが売れている。ここではこんな菓子を作っていて、こんな菓子が売れている。

もし当店がこのメーカーの機械を使いお菓子を作って売り出し、そのお菓子が本当に売れたとしたら、恐らくこの機械メーカーの営業の人は、他の店でこういうに違いありません。

「三松堂さんでも当社の機械を使っていまして、このお菓子を作っているのですが、これが今売れてまして。作り方はというと・・・・」

まあ、細かい作り方や秘伝などは、もちろん言わないと思いますし、そう願いますが、せっかく作った売れるお菓子を、この機械メーカーを通じで全国のお菓子屋と共有してしまうことになるでしょう。

菓子を作る機械は、もちろん菓子を作る場所におきます。と言うことは、機械メーカーの人は、他の人では入ることの出来ない、言ってしまえば菓子屋の心臓部まで、入っていける人たちなんです。ある菓子を機械で作ろうとしていても、もしうまく行かなければ、もちろん菓子屋は機械メーカーに相談します。こういう配合で生地を作って、餡の糖度はこれくらいなんだけれど、うまく行かないがどうすれば良いか。こんな質問もするでしょう。

職人の次に菓子作りに近い人たちが、「ここではこういうお菓子を作っていてこれが今売れています。この菓子はうちの機械で作れます」と言って回ってるんです。

これって非常に怖くないですか?

もしかしたら、気づかないうちに、自分のところの情報が全て流れ出ているかもしれない。大切にしていたものが、いつの間にか全国の菓子屋と共有していると言う事態が起こるかもしれない。そういう気分になりました。まあ、本当に核心のところは言ってないと望みますが・・・。

これだけでも十分怖いのですが、実はこれだけではなく、まだあるんです。怖いなぁ、と思ったことが。まあ、その話はまた来週にでも。

2002年11月15日(金)
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