お店に来られるお客様は、大体二つに分けることが出来ます。
一つは、自分用のお菓子を買いにいらっしゃるお客様。もう一つは、贈り物に使うお菓子を買いに来られるお客様です。和菓子は性格上どうも、後者の利用が多いですね。
贈り物にするとき和菓子と切っても切れないもの、それは箱です。お客様が贈り物を考えるとき、細部まで気を使うのは当然のことであり、当店としてもその期待に答えるよう、商品同様、箱にも気を配っています。
贈り物用の箱は、以前何種類かあったのですが、今年からすべての箱をすみれ色の柄で統一しました。すみれ色に白く家紋が入った柄の箱です。前は、花柄や色とりどりの箱も用意していました。それはそれで評判は良かったんですが、当店はやはり和菓子屋であり、箱の華やかさよりも、商品自体の華やかさを前面に出そうと言うことで箱の色を全てすみれ色にたんです。贈り物といえど、箱は脇役でしかありません。主役の和菓子を引き立たせるため、あくまでも高級感は保ちつつ、シンプルでなくてはならない。そう考えた結果なんです。
このすみれ色の箱なんですが、皆様もうご存知のとおり、表面には和紙が使われています。三松堂のイメージカラーでもある、このすみれ色に、白く家紋が入っているんです。家紋入りのこの和紙は、産地として有名な福井県で和紙製造業を営む方に頼んで特別に生産してもらいます。そしてこの和紙を今度は、山口県の山口市と萩市にある箱屋に搬入し、仕上げてもらっているんです。こういう過程を経て、あの箱は出来上がるのですが、関わる全ての人が良い仕事をしてくれるので、このすみれ色の箱は、大変評判が良いですね。
よく、この箱を集めているお客様がいるという話を聞きますし、鴎外饅頭の箱を三十個以上も集めたという学校の先生もいらっしゃいましたね。それから、この箱は後で色々なことに使えるからと、とっておく人もいるようです。小物を入れるのにちょうど良いから、という人や、鯉の里の十二個入りの箱を箸入れや筆箱、手紙入れとして使っている方もいると聞きました。
まだ使えるので、と買い物をする時にまた持ってくる人もいます。その箱にまたお菓子を詰めて、箱をリサイクルしようと言うわけなんです。今はごみにお金がかかる時代です。なるべく、ごみを減らそうというその気持ちは非常に素晴らしい事であり、我々も見習わねばならなりません。ただ、非常に言いにくいのですが、こういう場合、我々はお断りしなければならないんです。とい うのも、一度使われた箱は、どうしてもどこかに 傷が入ってしまうもので、それを知っていて使うことが、どうしても出来ないのです。
ごみをなるべく出さないようにしたいので箱は必要ないという方や、自宅 用のお菓子に高級な箱は必要 ない、という方がいらっしゃ いましたら、何時で も店員までお申し 付けください。ご自 宅用に簡易の組み 立て箱や紙袋も用 意しております。
本店の店員より