上生菓子・その二

上生菓子のお話を続けたいと思います。

今回は「錦玉羹・きんぎょくかん」、「藷蕷饅頭・じょうよ まんじゅう」、「きんとん」を紹介したいと思います。

まずは「錦玉羹」からです。

 

この錦玉羹は、その見た目の涼し さからも夏によく作られ、涼菓として楽しまれています。原材 料は寒天、砂糖、水飴と至ってシンプルなお菓子ですね。

ただこの錦玉羹、シンプルなだけに中に餡玉を入れて固めたり 淡雪や羊羹を合わせたりと、いろいろな形や味、食感を演出す る材料として使われることも多々あります。

透明な錦玉羹を水に見立て中に小さな金魚を入れ固めたものを 皆様もご覧になったことがあると思いますが、やはり見た目の 涼しさからも、水や氷などを表現するときに重宝されるのがこ の錦玉羹といえるでしょう。

次は「藷蕷饅頭」です。

 

この藷蕷饅頭の藷蕷とは、自然薯(じ ねんじょ・山芋のこと)をおろしたものに米の粉、砂糖を混ぜ、 蒸し上げたもののことを指します。この生地で餡玉を包んで蒸 すと藷蕷饅頭が出来上がるというわけです。蒸し饅頭は基本的 にこの藷蕷饅頭のように山芋を入れたものと、イーストパウダ ーを入れたものとがありますが、やはりイーストパウダーより も自然薯のはいった藷蕷饅頭のほうが我々はよりこくのある風 味がでてよいと考えます。

中の餡は、白餡、こし餡、粒餡いろいろな餡を包むことができ ます。皮に入る自然薯ですが、当店では丹波のつくね芋を使っ ています。

最後に「きんとん」です。

 

この上生菓子はまず、こし餡や白餡 などに寒天を加え、それを「とおし(ふるい)」で押し出し糸状 の餡を作ります。この糸状の餡を餡玉の核の上に飾り付けて出 来上がったものが、きんとんと呼ばれています。

「きんとん」の特徴ははまず、色彩としてその色を自由に使え ることにあります。白餡を使えば、色も付けやすく、色の種類 も豊富になります。さらに二つの色の餡を使えば、一つのお菓 子の中で二つの色が使え、うまく使えばその二つの色が混ざる ことがないので、色の表現などが豊になります。このような理 由からきんとんは季節の花などを再現するのに重宝されます。

さらにはその食感です。餡のしとりを逃がさないために寒天を 加えてはありますが、そのほとんどは上質の豆で丁寧に作られ る餡です。美味しい餡は口の中でさらりと解けていきますが、 もちろん「きんとん」もこの食感を受け継いでいると言えるで しょう。「とおし」で糸状の餡を作る過程で餡が空気を包み込ん でいますので、その口解けは餡以上ともいえるのではないでし ょうか。こういった理由から、きんとんはお茶のお菓子として も重用されています。

このきんとんですが、今月紹介しています栗きんとんも、材 料は違いますが同じきんとんと言う名前で呼ばれています。た だこちらは上生菓子として使われることは余りありませんね。

当店の栗きんとんは、津和野で取れた地の栗を使います。たっ ぷりの栗をすりつぶし、そこに白餡を少量加え形を整えます。

秋の味覚の代表格、栗の風味を損なわず、さらに、ただ栗をそ のまま食べるよりも美味しくなるように工夫しています。この 季節だけの限定ですので、是非一度ご賞味ください。

資料参考文献
「茶の菓子」  千宗室監修 鈴木宗康著
昭和五十四年 淡交社発行
「百菓辞典」  山本候充編
平成九年  東京堂出版発行

2001年10月1日(月)
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