上生菓子・その一

上生菓子のお話をしたいと思います。

 

さてこの上生菓子ですが、和菓子屋に行くと小さく、形良い お菓子が店頭に並んでいるのをご覧になったことがあると思い ます。「これ一つでこの値段?」と驚かれた方もあると思いま すが、やはり上生と言うだけのことはあり、最上の材料と職人 の技術の結晶なんですね。和菓子の中でも一番味が良く、手も 込んだ品のいいお菓子で、生菓子であるがために賞味期限も非 常に短くなっています。

その上生菓子でも、「こなし」や「きんとん」など、色々技 法はあるのですが、今月はその中から「こなし」、「練り切り 」、「ういろう」をご紹介してみたいと思います。

まずは、「こなし」です。こなしとは餡に小麦粉、餅粉を混 ぜて蒸し上げたものを呼びます。名前の由来が、こなす(京都 の言葉で手で揉むの意)から由来していることを見てもお分か りのように、こなしは京菓子素材の一種になります。

餡に、小麦粉・餅粉を混ぜ蒸し上げたものを冷まし、必要に 応じて天然色素で着色してから形を作っていきます。こなし生 地に少しねばりがあるために細工がしやすく餡を巻いたり、木 型でいろんな形に仕上げることができます。しかし個人的な意 見ですが、やはりひねったり丸めたりの手仕事で仕上げたもの の方が温かみが感じられ、魅せられるような気がします。

こなしの特徴はやはりその食感にあると思います。口に入れ 優しくかんでいると餡の甘味が口の中に広がり、それと同時に こなし生地がゆっくり解けていくのがわかると思います。

さて、次は「練り切り」です。

練り切りは、白餡につくね芋やぎゅうひを混ぜて作る餡です こなしと同じく、細工がしやすいようにつくね芋やぎゅうひを つなぎに使います。当店では、自然薯を使います。

作り方ですが、まず自然薯の皮をむき、蒸します。そのあと 芋を裏ごしして、餡と練り合わせます。こちらも必要に応じ天 然色素で着色し、いろいろな形に細工をしていくわけです。

当店の練り切りは自然薯を使用するため、ほのかに芋の味が しますけれどそのうま味はやはり餡のあま味ということができ ます。こなし同様さらりと解ける食感はお茶菓子としても重宝 されています。

次は「ういろう」です。

ういろうはもともと、葛を使って作っていたようですが、こ こに紹介している上生菓子のういろうは米粉、餅粉そして砂糖 を使って作ります。

このういろうの名前の由来ですが、鎌倉時代にいた薬売りが 売っていた薬の名前が「外郎」だったそうです。その薬は、も う今はないそうですが、その薬売りが薬の後味を消すために出 していたお菓子、それが今も「外郎」として残っているという 説があります。

さて、作り方ですが、米粉と餅粉、砂糖を混ぜ、必要に応じ て色をつけてから、蒸し上げます。それをいろいろな形にする わけですが、揉んで伸す作業の後、餡を包んだりもします。

餅粉や米粉を蒸し上げて作るためお餅と似ていますが、「う いろう」の食感は餅のそれよりも優しく、弾力はあるのですが 非常に上品な口当たりになっています。

資料参考文献
「茶の菓子」  千宗室監修 鈴木宗康著
昭和五十四年 淡交社発行
「百菓辞典」  山本候充編
平成九年  東京堂出版発行

2001年9月1日(土)
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