「最中は好きですか?」
最中(もなか)が好きですか?
この問いに対する答えは恐らく、はっきりと分かれることになると思います。大好きな人と、大嫌いな人と。どちらでもない中間は、殆どないのではないでしょうか。
最中は日本を代表する和菓子の一つです。誰でも知っていて、どこにでもあるお菓子ですよね。しかし、この皆様に馴染みの深いお菓子なのですが、実は羊羹と同様、好き嫌いのはっきりと別れるお菓子でもあります。
当店の客の流れを見ていて、羊羹も最中も比較的年配の方が好む向にあるような気がします。逆に若い方はこの二つのお菓子があまり好きではないようですね。まあ、若い方の多くは、この二つと言うよりも、和菓子を好まれる方自体が少なくなってきたように思われます。
その理由の一つが、前々から言っていますのでここではあまり繰り返しませんが、糖度の問題がでしょう。若い人に和菓子を嫌う理由はなんですか、と聞くと必ず、「甘すぎるから」と言う理由が返ってきます。確かに、以前の和菓子はそれほど甘かったんですね。
この糖度の高さは、その時代の人々の甘さの欲求を満たしていた、と言うこともあると思いますが、もう一つ、保存のことを考慮して甘くしてあったのではないか、とも思います。
どういうことかと言えば、砂糖は塩と同じくらい、保存料としての効果があります。砂糖漬けの果物が長い時間保存できるのは、砂糖が防腐剤の役割を果たしているからなのですが、和菓子の糖度もこれと同じことではないのかな、と思うときがよくあります。
砂糖を大量に使い、糖度を高くする。そうすることにより、保存できる期間をかなり長く設定することが出来ます。当店のお菓子でも、糖度が高いために保存の期間を長くできるお菓子が幾つかあります。羊羹類や鯉の里などがそうですね。これらのお菓子は、恐らく1ヶ月以上、痛むことがないと思います。
ただし、そうは言っても当店では、これらのお菓子の賞味期限を10日程度にしています。それは保存できる期間と美味しく食べられる期間は必ずしも同じではないからです。
作って一日置いたほうが味がなじんでおいしくなるお菓子もありますし、作りたてが一番美味しいお菓子もあります。しかし、どんなお菓子でも日が経てば経つほど、味が劣化するように我々は感じるんです。最中が嫌われる理由は、ひょっとしたらここにあるのではないか、と思うことがあります。
もなかも、結構日持ちのするお菓子です。種(たね)は餅を香ばしく焼いてあるだけに、痛むと言うことが余りありません。ということは、餡の糖度が高ければ高いほど、保存の出来る期間は長くなります。保存が出来る期間が長く出来れば、賞味期限を長く設定するところも自ずと増えていくと思います。
当店でも、「このお菓子、どのくらい持ちますか?」と聞かれることは良くあります。まあ、津和野という観光地で商売をしていますので、お客様が他の方の御土産にお菓子を買っていくことが多いため、賞味期限が長いほうが重宝されるのは確かです。売る方にしてみても賞味期限の長いほうが、商品の量を調節しやすいため売れ残りのロスが少なくなります。いわゆるお土産物屋で、賞味期限が1ヶ月以上というお土産ものは結構ありますが、それはこういった理
由からではないのかな、と思います。
ただし先ほども申し上げたとおり、保存が出来るからといって必ずしも「美味しさ」まで保存できるわけではありません。美味しさは、時間の経過と共に失われていくものです。最中も当然時間が経てば美味しさが失われていきます。
そして最中の場合、時間が経つにつれ種が湿気を吸い続け、味が劣化していくことになるのです。
?続く