ビジネスと商売

先週のメールマガジン配信後、読者の方からお便りを頂きました。その内容は「なぜ赤字覚悟で抹茶のババロアを出すのか」ということでした。ということで、この場を借りてそのご返答をしたいと思います。

抹茶のババロアを赤字覚悟で出すのは、一言で言うとそれが「おいしいから」です。我々にとってお菓子とは商品である前にやはりお菓子ですから例え利益が薄くとも美味しいのであればどんどんお店に出していきたいんです。

でも、利益の薄い商品を手間隙かけて作るのですから、利益率は悪いし、儲けもトントンか赤字になることあります。おそらく、ビジネスとしては失格でしょう。読者の方が疑問に思ったのも、よく分かります。しかし、我々は和菓子屋をビジネスではなく、商売だと思っているんです。

例えば、もしこの和菓子屋がビジネスであるのなら、利益追求を最大の目標に掲げることになります。そうなると、どうしても安い原価で商品を作り、多くの利益をそこで出すという方向にすすんでしまいます。ということは、良い材料で美味しいお菓子を作るということは二の次になってしまうと思うんです。

しかし、我々はこれはビジネスではなく、商売だと思っていますので、利益追求が最優先事項ではないんです。最優先事項ではないから、抹茶のババロアを商品化したり、足の悪いお客を駅まで車で送ってあげたり、来る客全てにお茶を出したりと、もっとお客様と人間的な付き合いが出来るのだと思います。

こういうことを言うと、奇麗事だと思われる方もいるかもしれません。しかしこの経営方針は我々にとっての生き残る術だとも言えます。利益追求は都会の会社の得意技です。その土俵で戦っても勝てるわけはないからです。私たちは私たちに出来ることをしているだけなのです。ただ、そこが私たちの強みでもある、とも思っていますが。

確かにこういう経営方針ですと利益は薄くなりますが、その分お客から必要とされる度合いは高くなり、結果としてお店が長生きできるのではないでしょうか。今この不況時に誰も解雇せず、商売していられるのも、その結果ではないだろうか、と思うんです。

2002年9月27日(金)
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