リサイクル

先日、合鴨の卵をいただきました。

早速、目玉焼きを作ろうとフライパンの上で殻を割りました。黄身がぷっくりと盛り上がっているのがよく分かります。心なしか、黄色が濃いような気もします。

皿に移し一通り眺めた後、もったいないような気がしましたが、黄身に箸をつけました。弾けた薄い皮の中から黄身が溢れ出てきます。その流れ出た半熟の黄身と白身を一緒に箸で口に運びます。濃厚な黄身と淡白だけれどもぷりぷりとした白身、卵本来の美味しさが口の中に広がります。自然に近い状態で育った合鴨の卵って、こんなに力強い味がするのか、と感心しました。

冒頭からいきなり合鴨の話で始まりましたが、この合鴨、実は当店のお菓子と非常に深い関係があります。深い関係と言ってしまえは話は大げさになりますが、この合鴨、菓子の製造過程で発生する生ゴミを処理してくれているのです。

和菓子を作るにはもちろん、餡を作らなくてはなりません。餡には粒餡もあり、こし餡もあります。粒餡は豆の全てを餡にしますが、こし餡は豆の中の呉だけを餡にしますので、外の皮は生ゴミとして処理されます。当店も以前は、この小豆かすを生ゴミとして焼却していたのですが、数年前から農家の方に引き取ってもらうことになりました。廃棄物の再利用、有効利用ですね。

この農家の方、最初はこの小豆かすを堆肥として使っていたようですが、ある日合鴨農法で飼っている合鴨のえさに小豆かすを混ぜてみたところ、非常によく食べることに気が付かれたそうです。それ以来この小豆かす、合鴨たちのえさになってしまったとのことでした。今では他の農家の方も放し飼いの鶏のえさとして、この小豆かすを使っています。

最近は自然と環境の保護のため、各地の自治体などがリサイクルに力を入れています。当店でも、社会の一員としての義務を果たすため、リサイクルには協力していくべきだと、以前から話をしていました。お菓子を作る過程ででてくる生ゴミを出来るだけ多く有効・再利用は出来ないだろうか。そう色々考えていたところ、冒頭の農家の方が小豆かすを堆肥に使ってみたい、と申し出て下さったのです。非常にうれしいことでした。それ以来ずっとこの農家の方との関係は続いています。

リサイクルの一環として他にも、当店では合鴨や鶏のえさにならないお茶の葉などを、処理機で堆肥にする実験もしています。実験といったら笑われそうですが、できるだけ多くのごみを堆肥として有効利用できればと思うんです。

今は農家の方々と、当店から出る豆かすやお茶の葉を堆肥として使い、農作物を作りその農作物がまたお菓子の原料になれば良いね、と話をしています。お互い農薬を嫌い、なるべく自然な農法・自然な食べ物を目指しています。原料の出所が分かれば食べ物としてはもちろん、堆肥としても残留農薬などを気にせず安心して使うことができます。そういう循環型のシステムが作れないかなぁ、と案を練っているところです。大変難しい話なので、実現するとしてもまだまだ当分先ですね。

リサイクルの話といえばもう一つ、包装のことです。リサイクル問題の基本は、「ゴミを出さないこと」。これに尽きます。先月もお話したとおり、和菓子というものの性格上、包装を簡素にすることには限界があります。ということで、当店ではこれから包装形態を贈答用とご自宅用の簡易包装に分けていこうと思っています。ご自宅用の簡易包装はゴミが出ないよう必要最低限に留めたいと思います。皆様のご理解とご協力のほど、宜しくお願い申し上げます。

本店の店員より

2002年7月1日(月)
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