包装

ある程度の金額の買い物をすると大抵、商品は包装されて出てきます。当店の場合もそうなんですが、最近この包装で悩んでいるんです。

「これは過剰包装ではないのか」

「贈り物なら、もう少しきちんとした包装をすべきでは」

これらは実際にお客様から頂いた言葉です。相反する二つの意見なのですが、これらは事実であり、こういったお客様からの言葉は何時も我々にいろんな事を気づかせてくれます。本当にありがたいことです。

和菓子という性格上、包装は必ずせねばなりません。しかし時として包装をし過ぎていることがあるのも事実なんです。源氏巻などは一本を包装するのに、まずプラスチックの袋で密封包装し、それを薄板で包み、その上からさらに絵の入った包装紙で巻くんです。それを箱に詰める場合、箱の上からさらに紙で包むことになります。過剰ですね。

現代はゴミにお金がかかる時代です。あまり包装が多すぎるのも、敬遠される時代です。それにゴミにお金がかかるのは環境の問題が多く絡んでいるため、ゴミを出さないようにするのも和菓子屋としての義務であり、当然のことだと思うんですね。

先ほどの源氏巻の例で言いますと、薄板は今、装飾以外の何物でもありません。それで巻かなくても、それを省略しても何の問題も無いんです。環境問題から言えばむしろ無いほうが良いのでしょう。

ただ、そんなに簡単に捨てても良いのだろうか、とも思うんです。薄板で巻くのは昔からの源氏巻の包装形態なんです。源氏巻に移った木の香りがとても良いから、と昔はどこもこの薄板を使っていました。大げさな言い方をすれば伝統なんですね。その伝統を簡単に止めてもいいものだろうか。そう何時も悩むんです。

包装のことで悩む理由は、実はもう一つあります。それはお菓子のコストのことです。洋菓子和菓子、どんなお菓子にもある程度の包装は必要です。しかし、この包装は無料ではありませんので、お菓子の売値に包装の値段も含まれることになります。

お客様としても、ある程度見栄え良く包装されたお菓子を買いたいと思うのは当然だと思います。ただ、お菓子を買うのに包装材にまで沢山お金を払いたくないという方も多いのではないでしょうか。

さらに、当店はいつも、美味しいものを適切な値段で、という事を心がけて商売をしています。美味しいものを作るためには良い材料を使うのは当然のことで、今の時代、安全で良いものを買うにはそれ相応の値段払うことが必要になります。そしてその材料から美味しいお菓子を作るためには、熟練の職人が手間隙をかけねばならないんです。 ということは美味しいお菓子を作ると、原材料、人件費でお菓子の値段は自然と高くなってしまうんです。良いものを作るにはこの二つ、原材料費と人件費は絶対に削ることが出来ないコストなんですね。

では、美味しいものを適切な価格で提供するにはどうするのか。我々はなるべく包装をシンプルにし、ここでかかるコストを出来るだけ削減するしかないのではないか、と思うんです。お菓子に直接関係の無いこの部分を出来るだけ安くして菓子全体の値段を抑えようということなんです。そこで色々試してはいるのですがシンプルでかつ見栄えの良いものを作るというのは、なかなか結構大変な作業ですね。

先ほどは伝統の事に触れましたが、これまで話したように時代や当店の進むべき方向性を見れば、包装をシンプルにせざるをえないのではないか、という結論に達しつつあります。しかし包装がシンプルすぎても、冒頭の言葉どおり、贈り物に向かない場合もまた、あるんですよね。

そこがまた悩みの種なんです。

本店の店員より

2002年6月1日(土)
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