普段より三松堂をご贔屓にして頂き、誠にありがとうございます。
私は、三松堂・三店舗あるうち本店でいつも仕事をしています。色々なお客様がいらっしゃいますが、本店に来られる方は、町内の方が半数、町外の方が半数といったような感じでしょうか。どちらにしろ、定期的にこられるお客様がほとんどです。皆様がお得意様なんです。特に毎月一日は、太鼓谷稲荷神社にお参りに行かれる方が多く、帰り道に当店で買い物をする人も多いですね。そういったお客様は、もう何十年来のお得意様になります。本当にありがたいことです。
お得意様にまつわる話といえば、こんなこともありました。
二、三年ほど前の夏のことです。夏といっても、もう秋に近かったような気もします。いつものように本店で仕事をしていますと、あるお得意様がお店に入ってきました。まだ午前中のことでした。外はよく晴れていました。
歳は六十前後、とても素敵な男性の方です。物静かな人でしたので、普段から会話を交わすようなことはめったにありませんでした。その日も、挨拶程度の言葉を交わした後は、店内を歩く音、商品を手に取る音以外何も、聞こえませんでした。そして、いつものように静かに、鯉の里を購入されました。
翌日のことです。電話でお菓子の注文が入りました。住所を確認すると、どうやら昨日の方の家のようです。「そういえばここの人、昨日来てたね」。何気に、そう言いました。すると横にいた同僚がこう答えたんです。「そんなはずないよ。その人はずっと入院しとられたもん。それに亡くなったの、その人よ」。注文は、葬儀で使うお菓子でした。
私の勘違いだったのだろう。そう思いながら、お菓子を届けました。その時こっそりと写真を確認しましたが、見れば見るほど昨日来られた人にそっくりでした。月並みな表現ですが、なんだか狐につままれた様な気分でした。
これは近場での出来事でしたが、お得意様の中には、遠方から来る方もたくさんいらっしゃいます。広島、山口などの中国近県から九州など車で二、三時間かけてくる方も多いのですが、なんと言っても本当に遠くから来られるのは、島根県出雲地方のお客様ではないでしょうか。
「同じ島根県なのになんで一番遠いの?」そう思われる方も多いでしょう。実は島根県は東西に長い県にもかかわらず、高速道路が通ってないんです。ですので西の端・津和野から東の端・県庁所在地の松江までは、車で五時間もかかります。 出雲地方のお客様は、朝早くに家を出発し、津和野に来て昼過ぎにはもう帰路に着きます。まあ何かのついでかもしれませんが、朝早く家を出て当店に立ち寄ってくれたということを聞くと、本当にありがたいなぁと思うのです。
本店の店員より