最近、この経営理念というヤツを浸透させるべく、機会があれば店員達と話をすることにしています。
当店の経営理念は、まあ平たく言えば、『 お客様に本当に満足していただく 』、と言う事に成ります。ただ、それでは余りにも面白みがないので、当店ではちょっと違った言い方をしています。
前にも少しお話したのですが、和菓子を作る事が当店の本当の仕事なのかどうか。
『 お客様に本当に満足していただく 』と言う事が当店の最終目標であれば、和菓子を作って売ることは仕事ではあるけれど、あくまでも目標を達成する手段でしかありません。
正直なところ、和菓子を作って売ることは、質を考えなければ誰でも出来ます。そんなに難しいことではないんですよね。そして、便利な世の中ですので、楽をしようと思えばいくらでも楽が出来る。
例えば、販売は全て自動販売機にする。菓子に保存料を入れて日持ちを長くすれば、商品のロスも格段に減ります。機械メーカーの教えてくれるレシピ通りに機械でお菓子を作れば、商品開発など煩わしい事が一切無くなります。
正直なところ、頭を全く使わなくても和菓子屋は出来ます。今よりもずっとずっと楽が出来るんです。本当に便利な時代ですから。
しかし、当店ではそういったビジネスはしていませんし、これからもする事はないでしょう。なぜならば、当店の最終的な目標が、『 お客様に本当に満足していただく 』と言う事だからです。
自動販売機でお菓子を買った人が嬉しいのだろうか?お客様が、保存料がたっぷり入ったお菓子を食べたいと思うのだろうか?お客様自身のお子様に食べさせたいと思うのだろうか?どこでも買えるお菓子を食べて、お客様は本当に満足していただけるのだろうか?
いろいろな場面で、『 どうしたらいいのだろう? 』と思う事が良くあります。でも、経営理念さえしっかりしていれば、答えは自ずと出て来ると思います。
以前、吉田小学校の生徒が当店でアンケートを取ったとき、アンケートに答えた1人のお客様が、当店の『いちごの大福』に関してこう書いてくださいました。
「おもち、モチモチして、中のいちごがとても甘くて、食べたときにとてもしあわせになる。いちご大福を食べたら、つらい事を忘れられるよ」
この感想にあるように、ほんのひと時でも『 美味しいなぁ。幸せだなぁ 』と感じていただけるよう、当店は今まで努力をしてまいりました。
なので、この感想を読んだときは、本当に嬉しかったですね。
たかがお菓子です。
『 お客様に本当に満足していただく 』と言ったところで、お菓子にできる事などたかが知れています。
ただ、当店のお菓子を食べてもらうことによって、忙しい日常の中、ほんのひと時でも『 ホッ 』と幸せを感じて頂ければ、こんなに嬉しい事はありません。
それが、我々に出来る唯一の事であり、全てではないかなぁ、と思うのです。