手詰めもなかの出来るまで3

「手詰めもなかの可能性」

では、どのようにすれば、もっと美味しい最中をお客様に食べてもらう事が出来るのか。

そう考えたときにでた結論が、「手詰めもなか」でした。

もう皆さん、すでに一度はこのような形の最中を見たことがあることでしょう。食べたことがある人も多いと思われます。

なので、あまり多くは説明いたしませんが、この最中は種と餡が個別にパックしてあり、食べる直前に種に餡をはさんで食べるタイプの最中です。

この最中は、種と餡が別々にパックしてあるのがポイントです。うして包装することにより、種が餡から湿気を吸い込むことを防ぎ、種がしばらくの間、作りたての香ばしさを保つことが出来るのです。

最中の種は、この種だけを作る会社があり、当店でも家紋入りの種を特別に作ってもらっています。

金沢にあるこの種の会社がパックされた種を開発したので、当店にもそういう形の種がありますよ、と以前から教えてもらっていました。

ということで、実は「手詰めもなか」を作るという話は数年前からあったのですが、いまいち製造して販売にまで話が発展しませんでした。

話が進まなかったのは、主に理由が2つありました。1つは、お客様に自分で餡を詰めてもらわなくてはならない事、もう1つは餡と種のバランスの事でした。

お客様に菓子を自分で作らせてもいいものだろうか。実は、そういう話がずっとあったんです。

「そんなことで話合わなくても」、と思うかもしれません。でも職人としてみれば詰めるという作業はまだ彼らの仕事であり、そこをお客様に任せてもいいのだろうか、と言う心配があったようです。

まあ、これと密接に関わってくるのが、バランスの問題なのです。

すべての菓子にはちょうど良い塩梅と言うものがあります。もなかの場合も、種の大きさに対するちょうど良い餡の量と言うものがあるんです。

餡が少なすぎると甘さが物足りなく、逆に多すぎると今度は餡の風味で、種の香ばしさがかき消されてしまいます。

作る側とすれば、お菓子は一番美味しく食べてもらいたいと願います。そういう意味でも、一番美味しい状態で菓子を出したいと思うのは当然のことだと思います。

しかし、「手詰めもなか」は餡と種のバランスをお客様に任せてしまうことになります。いくら美味しい餡を作り、美味しい種と一緒に売り出しても、本当に一番美味しい状態で食べてもらえるかどうかの保障はないのですね。

美味しい菓子を作ることが仕事の職人にとって、心配になるのは当然の話です。そういう心配があったために、いまいち製造まで繋がらなかったのです。

しかし、今回ようやく販売にまでたどり着きました。

上記のような心配は実は今でもあります。でもまあ、例え一つくらい不安要素があっても、「自分でつめる楽しさ」を味わえる菓子と言うものがあっても良いのではないか、と言う結論に我々がようやく達したからなんです。

職人から見ればそれは確かに不安定な要素かもしれません。

しかし、自分で餡を詰めると言うことは、考え方を変えれば、そのお菓子を自分好みに仕上げることが出来るということにもなります。

一番美味しい餡の量は決まっています。

でもひょっとして、てんこ盛りの餡が好きだと言う人もいるかもしれません。逆に種だけをバリバリ食べたい人もいるかもしれません。

客の立場から見れば、そういう風に自分達で好きなように好きな最中を作ると言うことは、楽しさなのではないか、と思うのです。

例えば、アイスクリームなどを一緒に挟んで食べることも出来ます。

生クリームが好きな人は、生クリームで試してみるかもしれません。

栗の甘露煮があれば一緒に挟んでもいいですね。

こういう風に、各個人が楽しみながら作り上げ、食べることの出来るお菓子があってもいいのではないだろうか、と思えるようになったのです。

そういうわけで、後発ですが「手詰めもなか」の開発に入りました。そして開発する段階で、我々は「手詰めもなか」には、ある可能性が秘められていることに気が付きました。

それは、湿気の問題を気にしなくてよくなった為に、餡が固さの束縛から解放されたということでした。別々にパックすることで、種が湿気を吸うことがなくなったため、餡を寒天で硬めに仕上げる必要が、全くないことに気が付いたのです。

?続く

2007年7月20日(金)
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