年末からお正月にかけて良く見かけるお菓子に椿餅があります。餡を包んだお餅の上下を椿の葉で挟んだお菓子なのですが、このお菓子は源氏物語の中にも出てくるほどの長い歴史があり、現存する和菓子の中でも最古の物の一つとされています。
現在販売されている椿餅を見ると、道明寺で餡を包み、それを椿の葉で挟んであるものが多いようですね。
実はこれ現代風椿餅のようで、平安時代の椿餅は、小豆餡などは挟んでなかったようです。その代わり、この時代の甘味料であった甘葛(あまづら、ツタの汁を煮詰めたもの)を餅に混ぜて甘味を付けていたと言います。
内容も違いますが、この時代は呼び方も違ったようで「つばきもち」ではなく「つばいもちい」と呼んでいたそうです。その名残でしょう今でも椿餅と書いても「つばいもち」と呼んでいる所もあるようですね。
この椿餅、写真を見ていただいてもお分かりのように、後のお菓子に与えた影響は大きいですね。さくら餅や柏餅などはまさにここが原点なのでしょう。
当店でもこの和菓子の原点を一度作ってみようと言うことになり、この冬、椿餅を試作してみました。ただそのままの椿餅を作るのでは面白くないので、お餅に赤米を混ぜてあります。
当店でこの椿餅を発売することはありませんが、そろそろ春が訪れ、さくら餅の季節になりますね。椿餅の代わりにお一つ、如何でしょうか。
- 資料参考文献 -
「百菓事典」
山本候充・編、平成九年東京堂出版発行
「図説・和菓子の今昔」
青木直己・著、平成十二年虎屋文庫発行