あやめ餅は、餅粉、砂糖、水飴を練り合わせた求肥のお餅に、沢山のよもぎを練りこみ、きな粉をまぶした昔懐かしいお菓子です。言ってしまえば、よもぎときな粉の風味を楽しんで頂くお菓子なんですね。
よもぎは、キク科の多年草です。日本では特に珍しい植物ではありませんので、ご存知の方もも大勢いらっしゃる事でしょう。特に子供の頃野山で遊んで怪我をした時など、よもぎを使って応急処置をしていたものです。
春になると、若葉が出てくるので、昔はそれを積んでお餅に混ぜ、よもぎ餅などを家庭で作っていました。ここ津和野では今でもそこら中でこのよもぎを見ることが出来ます。しかし、最近では家庭でよもぎ餅などを作ることがほとんど無くなってしまったのではないでしょうか。
実はこれまで、何度かクレームを頂いたことがあるのですが、あやめ餅のあの色と香りは、痛んでいるからではないのです。おそらくよもぎ餅を家庭で作らなくなったため、よもぎそのものを味わう機会もなくなり、よもぎの味と香りを知っている人が少なくなっているのかな、と思います。まあ、よもぎはかおりの強い野草ですので、好き嫌いもあるのかもしれませんね。
あやめ餅のもう一つの風味、きな粉は和菓子の食材の中でも、最も人気の高い物の一つではないでしょうか。あやめ餅が、子供達から好かれている最大の理由はやはりきな粉という部分が大きいのでは、と思います。
きな粉というのは、皆さんご存知のとおり、炒った大豆の粉なんですが、味のほうは説明するまでもないでしょう。
おはぎにしたりご飯にかけたりもしますが、きな粉は何と言ってもお餅との相性が一番です。つきたてや、焼いたお餅にまぶして食べるきな粉ほど美味しい物はありません。もちもちとした食感ときな粉の風味が口の中で混ざり合うその瞬間は、他の菓子では味わえない感覚です。