??これは2002年の2月に終了した企画です??
■ 第1回 「こんなお菓子が食べたい」
■ 第1月目
□三松堂が皆さんの夢を実現します。
こんなお菓子があったら食べてみたいのに・・・・。
そういうことを考えたことはありませんか?例えば、和菓子屋の餡をたっぷり使った餡パン、餡を一切使用しない栗だけを使った栗羊羹、源氏巻の中に生クリームを入れた「生源氏」など、食べたいのに売ってない菓子、こんなの前から食べてみたかったお菓子、そんなお菓子をこの度、三松堂ではインターネットで大募集します。
ばかばかしいと思うものでも大丈夫。皆さんの夢、面白いアイディアを三松堂は実現させます。実現した商品は一回限りの限定生産・しかもオンラインショップでのみ受注販売。 今まではいろんな面で商品化できなかった幻の「生・鯉の里」もリクエストがあれば、お作りいたします(職人のOKが出ればですが・・・)。
アイディアをお持ちの方は、下の応募用フォームからどんどん応募ください。アイディアが採用された方には、 そのお菓子の先行試食及び三松堂の名菓詰め合わせをプレゼントいたします。
□「こんなお菓子が食べたい!」詳細及びスケジュール
まずは、お菓子のアイディア募集を10月いっぱいかけて行います。10月末日に、職人さん達を交え、アイディアの選考を行います。このときに現実可能・不可能なお菓子をふるいわけ、美味しそうなアイディアを選び出します。アイディアの応募は和洋中を問いませんが、なにぶん和菓子屋だけに、技術的にできないものも出てくることと予想されます。そのときは事情を説明するようにいたしますが、御了承ください。
11月号のメールマガジン・旬の菓、及び11月1日更新のホームページにて、採用されたアイディアの発表を行います。アイディアが採用された人にはメールで通知いたします。
11月、12月はお菓子の研究・制作期間とさせていただきます。なお、メールマガジン及びホームページにて進行状況の報告はいたします。
1月号のメールマガジン・旬の菓、及び1月1日更新のホームページにて、 注文販売の期間及び値段など、詳細を発表いたします。ここで採用されたお菓子は、基本的にインターネットのみ、一回限りの限定生産を予定しております。 なお、アイディア採用者の先行試食は1月末を予定しております。
□スケジュール
10月 お菓子の募集
11月 メールマガジン及びHPにて採用されたアイディア発表
12月 採用された「お菓子」の制作期間
1月 「お菓子」の注文受付開始(期間限定・インターネットのみ)
2月 2月の初旬に「お菓子」の販売・発送(予定)
3月 結果発表
□応募用フォーム
募集は締め切りました。大変ありがとうございました。
質問はこちらから
□この企画の趣旨
この企画の趣旨は、基本的にお客さんに楽しんでもらおうというのが一番にあります。それから、メールマガジン購読者、インターネットのお客さんに何か得になるもの、楽しんでもらえるものはないだろうかと考えたものです。
商品の案内を見ても分かりますように、季節の商品などは保存料をまったく使わないために賞味期限が2日ほどしかなく、宅配ができず、そのため、オンラインショップの商品は非常に限られたものしか置いておりません。
これでは、オンラインで商品を買っていただく楽しみがあまりないのではないか、といつも思っていたのですが、なかなかいい企画が思い浮かびませんでした。どんなものをお客さんは望んでいるのだろうか?そんなことを考えていて、ふと思いついたのが「いい企画が浮かばないのなら、最初からお客さんに欲しいものを聞いてしまおう」でした。そういうことから、この企画が始まりました。
ですので、まずは皆さんで楽しんでください。どんなアイディアでも結構です。くだらないと捨てておかないで、上のフォームからちょっと送ってみてください。面白いアイディア、楽しいアイディアをお待ちしております。
□注意事項
特に注意することはないのですが、 アイディアをフォームで送るときはメールアドレスを忘れないようにしてください。どんなにいいアイディアでも、連絡がつかなければそのアイディアは採用しませんので、御了承ください。
あと、商品はオンラインでのみの販売になります。ほとんどの方が宅配で商品を受け取ることになると思いますので、上生菓子など細かい細工を必要とするお菓子は、輸送中に形が崩れることが予想されるため、あまりこの企画に向いていないかと思われます。
■ 第2月目 「選考」
さて、十月中に行われました、「こんなお菓子が食べたい」の食べてみたいお 菓子募集ですが、数はそんなに多くはないにしろ色々面白いものが集まりました。正直、選考に手間取りました。
今まで職人さん達と色々話をしまして、結局最終的に二つのアイディアを残したんですが、ここからがの選考が予想以上に難航したんですね。というのも、単純に2つのうちから一つを選ぶだけなら、そんなに時間はかからなかったのでしょう。しかし、問題は簡単ではなかったのです。取り合えずここで、その最終選考に残った二つのお菓子とその説明を紹介しましょう。
□「小倉&バターのどらやきバージョン」
甘さひかえめのどらやきの生地の間にホイップされた軽めのバタークリームと小倉餡が厚めに挟んであって冷たく冷やされてある。バタークリームの風味、塩味と小倉餡の甘さがベストマッチしているとおいしいとおもいます
□「練羊羹」
何を今更「煉羊羹」とはと言われそうですが、私は、羊羹が好きで、津和野に行ったとき、たまたま入った貴店で食べた「鯉の里」には、ほんとうに、感動しました。しかし、よく「羊羹は○屋」と言われますが、本当にそうなんでしょうか。また、価格が高ければいいとも思えません。お世辞抜きに、私は、東京の羊羹より三松堂を選びますが、日本中の羊羹を食べてみたことがないので、職人さんが、採算も度外視して、「これこそ、羊羹の中の羊羹だ」という羊羹を食べてみたいです。
両方とも面白い企画です。両方とも作ってみたいと思いますし、実際自分たちで食べてみたいとも思います。ただ、この二つを比べてどちらを取るのか、という選択は非常に難しいということにこの段階で気づいたのです。
ご存知の通り、羊羹の原料は小豆、砂糖、水飴、寒天、そして水、です。シン プルなお菓子だけに、味が職人の腕にかかっている部分が大く、ごまかしがき きません。さらに、これだけの原料しか使っていない分、味に大きな幅がでる こともありません。小豆の風味を大切にした甘さと食感を楽しむお菓子という ことですね。
加えて、羊羹は和菓子を代表する食べ物で日本人であれば誰でも一度は食べた ことがあるものです。と言うことは、味のイメージがすでに頭の中に出来上が っていると言うことになります。
したがって、例え最高の砂糖、小豆、寒天、水を使い、職人が腕を振るって最 高の羊羹を作ったとして、果たして今までの羊羹よりもはるかに美味しい羊羹 ができるのか、というのは未知数なのです。
我々が今お店で売っている練羊羹も、言ってみれば現状で最高の味を出してい るといっても過言ではありません。ただ、作る過程において改善の余地がある 事も確かで、もっと良い最上の材料を使って作ることも可能なわけです。そう して出来た羊羹は、今の羊羹よりも美味しいものになるのは間違いないでしょ う。ただ、それが本当に人を感動させるほど美味しい羊羹になるのかというの は、なんとも言えないんですね。
「どらやき」の様に新しいものを作るときには、人々がまだ味を知らないので最初に食べたとき、美味しければわりと好意的に受け入れられます。しかし、羊羹は和菓子を代表するほどのお菓子なので、皆様の持つ「味のイメージ」をはるかに超えるお菓子を作ることが出来るのか、というのが問題になってくるわけです。
もちろん、「どらやき」のように新しいものを作るのも、非常に手間のかかる 難しいことではあります。ただ、このような一般的なお菓子をさらにもう一段 美味しくした物を作るのは、至難の業なのです。羊羹のような、シンプルなお 菓子になるとなおさらです。
このように最終選考はは非常に難しい選択になりました。まったく新しい味を作り出すのか、はたまた和菓子の伝統に挑戦するのか、この二つをまったく同じ次元で比べることは大変難しく、本当に悩みました。
結局、我々だけでは決めかねたの で、最終的に社長の判断を仰ぐことになり、朝から忙しく動き回る社長を捕ま え私は事情を説明しました。そして、社長は一言、こう私に言ったのです。
「両方作れ」
ということで、記念すべき第一回「こんなお菓子が食べたい」は以下の二つの お菓子に決定しました。
「小倉&バターのどらやきバージョン」
「練羊羹」
両アイディアを提出してくださった方々には、個別でメールを差し上げており ます。とりあえずは三松堂名菓詰合せをお送りいたします。後に上記の品が出 来上がり次第、選考試食という形でお菓子をお送りいたします。
さて、来月の「旬の菓」では、両品の製作状況と途中経過を報告いたします。
■ 第3月目
さて、「こんなお菓子がたべたい」も今月で第三月目に入りました。ここで少しスケジュールの変更がありますので、最初にご報告しておきます。
まず、お菓子の制作期間は11月12月となっておりましたが、1月も引き続き制作期間とさせていただきます。理由はあとで述べますが、一言でいうと新豆が出るのを待つということが決定したからです。
ということで、最後にスケジュールをつけてはありますので、詳しくはそちらをご覧になっていただければと思いますが、12月、1月はお菓子の制作期間になります。1月末までにお菓子を作り上げ、2月1日発行のメールマガジン「旬の菓」にて結果の発表および、注文を開始したいと思います。そして、2月の第2週か3週に発送を考えております。
さて、このスケジュールが伸びた理由でもあるのですが、どら焼きの粒餡、そして羊羹の餡に丹波大納言の新豆を使ってみよう、ということになりました。その新豆が出てくるのが、どうやら12月の終り近くなるようなのです。
何故わざわざ新豆を使うのかというと、それはやはり新しいもののほうが美味しいからで、ではなぜ丹波産の大納言なのかというと、それはやはり丹波産の大納言が国産のアズキの中で一番味が良いからなんです。
以前「職人の視点」でもご紹介しましたが、アズキには大納言(だいなごん)と小豆(しょうず)があります。大納言はその風味の良さと皮の薄さで粒餡にされることが多く、小豆(しょうず)はきめの細かさと皮の厚さでこし餡にされることの多い豆です。
さらに、豆の産地として有名な所が三ヶ所あります。北海道、備中(岡山)、そして丹波(京都及び兵庫の一部)です。これらの場所は、昼と夜で寒暖の差が激しい土地で、その気候が豆の栽培に適しているといわれます。これらの産地で採れる大納言、小豆によって値段が色々変わってくるのですが、特に値段の高いのが、丹波産の大納言なんです。それだけ味も、もちろん良いわけなんですが、この丹波大納言を使って今回の「どら焼き」と「練羊羹」を作ってみようということになりました。
まず、「どら焼き」のほうですが、当店では、実は以前に「ふくしろ」というどら焼きを作っていたんです。なかなかの人気商品だったのですが、10年程前に生産を中止しました。その理由は、餡の原料だった福白金時という豆が手に入らなくなったからなんです。この福白金時は白豆で味も良かったんですが、今回はこの福白金時は使わずに丹波産の大納言を使うことにしました。
その理由はバターとの相性です。
福白金時の餡は、そのものを楽しむにはいいのですが、おそらく塩味のバターとともに食するには向いていないだろうと、われわれは判断しました。バターを一緒に挟むのであれば粒餡のほうが良いのではないか、そして粒餡を作るのであればそれに一番適した・一番美味しい豆を使いたい。それが丹波大納言だったんです。
「練羊羹」の方ははと言いますと、普段当店では練羊羹に備中産の赤小豆(あかしょうず)を使っているんです。小豆(しょうず)というのは先ほども少し説明しましたが、こし餡の原料になるほどきめが細かいんですね。こういった理由から、小豆(しょうず)は羊羹にも適した品種であるといえます。しかし、今回はあえて、大納言を使おうと決めました。
今の練羊羹は、我々が羊羹に適していると思う、小豆(しょうず)、砂糖、水飴、寒天を使っているんです。さらにはその製法ですが、これは当店の名物でもあります鯉の里とほとんど同じ製法を使って作られます。(これは企業秘密のため詳しくは説明できません。ご了承ください)ということは今当店で売っている練羊羹は、言ってみればひとつの完成品なんです。
そうなると、今の練羊羹よりさらに美味しいものを作るには原料から見直していくしかないんですね。そういう理由から、この度は大納言を使ってみよう、ということになりました。大納言は基本的に粒暗に適した品種なので当店の職人の中にも羊羹に大納言を使うのは否定的な人もいるのですが、豆自体の味はなんと言っても大納言が上なんです。ただ、呉のきめの問題もありますので、味が良いからといって、美味しい羊羹ができるとは限りません。こればかりは作ってみないと、わかりませんね。
それと、「練羊羹」ですが、丹波大納言を使ったものと別にもう一種類、白小豆(しろしょうず)を使ったものを作ってみようと思っています。白小豆は、白豆の中でも一番味が良く、収穫高も少ないために非常に貴重な豆なんです。値段の方も、アズキの中で一番値段の高い丹波大納言(30キロで6万円)よりも、さらに高く30キロで10万円近くもするんです。こちらの方も、未知数ではありますが、とりあえずどんな物が出来るか実験的に作ってみようと思います。
丹波大納言、備中白小豆が手に入るのは、ちょっとまだわからないのですが、今月中には入荷すると思いますので、来月までにとりあえず一回は作ってみるつもりです。その結果報告を来月いたします。
■ 第4月目
2月の発売まで、あと1ヶ月と少しになりました。非常にあせっているのですが、年 末のお歳暮があり、その後お正月の準備であっちもこっちもと今大忙しです。
先月お伝えした原材料は、丹波大納言の新豆も備中白小豆の新豆も無事入荷しました。白小豆は今年は例年よりも、かなり値段が下がっていてほっとしたところです。
まず羊羹の進行状況をお伝えしたいのですが、実はまだ一回も試作を作っていないんです。といいますのも、7月号の旬の菓でもお伝えしたんですが羊羹の大きさを変えてみたんです。普通のサイズでは大きすぎるので、半分にしてパッケージも新 しくして12月1日から発売しました。そうしたところ、この小さな新しいパッケー ジが 好評で結構売れ行きが好調、職人も休み返上で追加を作っているような状況なんです。
これまで、棹物といえば月に数回作る程度だったので、まあ忙しくても1,2回は試 作が出来るだろうと思っていたのですが、少し予定が狂ってしまいました。申し訳ご ざいません。しかし、先月もお伝えしたように、当店の羊羹は基本的に「鯉の里」と 同じ作り方ですので、それほど試行錯誤しなくとも良い物が出来ると思っています。
ここで、「鯉の里」を知らない人に少し説明をしておきます。当店名物「鯉の里」と は羊羹を基にしたお菓子なんです。餡を基に作られるお菓子で小豆の美味さと砂 糖の純粋な甘みのみを楽しむお菓子です。そういった性格上、茶菓子としてもよく使われますね。
羊羹を基にしたお菓子ではあるのですが、羊羹との大きな差は、表面が少し乾燥 していることが上げられるでしょうか。ただ、表面が乾燥しているからこそ、食後に 甘ったるく感じることなく、さっとお口の中から甘さが消えていくのです。この口解けのよさが、「鯉の里」の秘訣でしょう。
お菓子の味を文章で伝えるのは限界がありますので、「鯉の里」にまつわるエピソ ードをひとつだけご紹介しておきます。それは、子供が良く食べるということです。 最近の子供は餡菓子を余り好まないのですが、小さなお子さんほど「鯉の里」をよ く食べます。それは、「鯉の里」の味が、混ざりけのない純粋な味だからなのではないかなぁ、と思うのです。
この「鯉の里」は三松堂現会長・小林萬吉により考案され、昭和40年発売以来ずっと会長のみが作ることの出来るというお菓子でした。会長はすでに現場を離れていますので、現在は工場長が「鯉の里」を作っているのですが、今はこの工場長以外に作れる人はいません。大げさな言い方をすれば一子相伝のお菓子なんです。
その工場長がこの度の「羊羹」を作ります。鯉の里やほかの棹物で培ったノウハウを活用し最高のものを仕上げると言っております。来月中には仕上げますので、 もうしばらくお待ちください。
どら焼きの方は、当店で一番の技術を持つ職人、技術課長が担当しています。ただ こちらも予定が遅れておりまして、まだ試作を一度しか作っておりません。
先月も言いましたように、餡には丹波大納言の新豆を使用しています。先日入荷したこの丹波大納言を粒暗に炊き上げたのですが、非常に味の良い餡に仕上げることが出来ました。
皮のほうはと言いますと、小麦粉、米飴、水飴、卵、砂糖、醤油、酒、牛乳を混ぜて作った物を鉄板で焼上げました。こちらのほうも、弾力があり、しっとりとした美味しい皮が出来上がりました。
しかし、この二つ単品で食べたときにはとても美味しいのですが、二つを一緒に食べたときになぜか美味しく感じることが出来ませんでした。二つを口の中で混ぜたときに相乗効果が生まれず、餡は餡、皮は皮、という風に一つ一つが自己主張をして余り美味しく感じることがなかったんです。
ということで、どら焼きのほうは皮と餡、さらにはバターを含めたときの相性が良くなるように、これから微調整していくつもりです。ただ、餡も皮もすでに味のいいものが出来ているだけに、そんなに調整に時間はかからないと思います。
来月は完成品をご報告します。同時に考案者お二人には試食として一箱ずつ完成品をお送りする予定ですので、お楽しみにお待ちください。
■ 第5月目
とうとう2月になってしまいました。
あっという間でしたね。年末年始は毎度のごとく忙しく、バタバタとしていましたが、その合間を縫って何とか「練羊羹」と「どら焼き」を完成させることが出来ました。
まずは羊羹の紹介
まず、羊羹なのですが、最初に言っておきたいことがあります。今回、本当に美味しい羊羹が出来ました。しかし、たとえ最高の羊羹であっても羊羹は羊羹でした。
最初に試作が出来たとき、周りはさすがに日頃から食べつけているだけあって、「おいしいねぇ」といって食べているのですが、自分には正直よく分からなかったんです、どこがどう美味しいのかと言うのが。自分は常日頃、羊羹を食べていなかったので、試作を食べたときに比較できるものがなかったんですね。で、いつもの羊羹を持ってきて、食べ比べてようやく理解しました。この羊羹の美味しさを。
ということで、自分が思うにこの羊羹は本当の羊羹好き向けの羊羹だと思います。日頃から羊羹に興味を示さない人には、余り向いていないんじゃないかなぁと思うのです。まあ、この羊羹で開眼するということも、無きにしも非ずだとは思うのですが・・・。ただ、羊羹好き、羊羹上級者の方にはぜひ食べていただきたい羊羹ですね。それだけの実力を持った羊羹であることは確かです。
それでは羊羹の紹介に入ります。
前々からお伝えしているように、羊羹は非常に単純なお菓子であります。材料は小豆、寒天、砂糖、水飴しか使いません。ということで、これらの材料をすべて最高のものにしよう、と作成者の工場長は言いました。
それから、丹波の大納言の新豆が出るのを待ち、砂糖も精製の度数の一番高いもの(純度の高い砂糖)を用意しました。寒天はいつも使っている、岐阜で加工される国産最高級のものです。
これらの材料がそろってから、銘菓「鯉の里」の製法を駆使して工場長が羊羹を完成させました。材料、技法とも、当店ではもうこれ以上のことは現時点では出来ません。今の時点では最高の羊羹だということが出来ます。肝心の味のほうも、いつもの羊羹と比べ、一段上のものが出来ました。
この丹波大納言の羊羹を一切れ、口の中に入れますと、ふわっと大納言の風味が広がるんです。それと同時に甘みも伝わってくるのですが、その甘みも、全然くどくなく、すっきりとした甘みなんですね。ですので食後に甘ったるい感じは一切残らず、小豆の風味とともに、甘さも喉の奥に消えていくような感があります。すっきりとした後口で、非常に上品ですね。
これと比べると、備中赤小豆の羊羹も美味しい羊羹なんですが、小豆の風味、甘みの上品さ、後味、どれをとっても少し見劣りするのは否めません。ただ、呉でいうと、備中赤小豆のほうがきめは細かいですね。丹波大納言は舌の上で少しざらつくような気がします。しかし、それ以外では明らかに丹波大納言の羊羹のほうが上だと言えます。
良い豆を使うのは当然として、何故、精製度数の高い砂糖を使うのかという、その理由なんですが、工場長いわく、その方があっさりする、ということです。精製の度数が高くなるほど、砂糖の純度が高まり、混ざり物がないだけに、すっきりとした甘みが出てくるようなのです。
糖度を高くするのか・低くするのか、という議論もありました。羊羹といえば、一切れで満足できるくらいの甘さがないとだめなのではないか、という意見もあったのですが、今現在のお客様の好みを考えるに、やはりできるだけ糖度は落とし、甘ったるくなく、あっさりとした羊羹を作ろうということになりました。そのせいもあり、精製度数の高い砂糖を使ったわけです。この選択も今回、吉とでたようです。
今までは、備中の赤小豆を使った羊羹が一番良いと思っていたのですが、この丹波大納言の羊羹を作ってしまった後では、ちょっと前者は色あせてしまうのは否めません。今まで当店の羊羹を「おいしい、おいしい」といって食べていたパートのおばちゃんたちが、この新しい羊羹を食べた後、「今までの羊羹は、ちょっと甘ったるいねぇ」と言い出したのです。
これまでの備中赤小豆の羊羹ももちろん美味しいのですが、丹波大納言の羊羹は、それ以上のものができたということでしょう。
次はどら焼きです
さて、次は「どら焼き」です。こちらは先ほどの羊羹とは違い、皆さんから好かれる、美味しいものが出来たと思います。
皮は、小麦粉、米飴、水飴、卵、砂糖、醤油、酒、 牛乳を混ぜて作った物を鉄板で焼上げました。弾力があり、しっとりとした美味しい皮が出来上がりました。餡は、前回説明したとおり、丹波大納言の新豆を粒餡に仕上げました。こちらも、国産最高の小豆を使っているだけに、非常に味の良いものが出来ました。
しかし前回、店内での試食で「皮と餡の相性が悪い」という結果が出たんです。「皮の柔らかさに対し、餡が少し固い。水分が少ないのではないか。」ということだったんですね。その結果を作成者の技術課長と話し合いました。
第一回目の試作では、餡に最中に使うような加工をしたんです。最中の餡には、寒天を少し混ぜてあるんです。というのも、なるべく餡からの水分を最中の種に移さないような配慮からなんですね。寒天で餡の中に水分を閉じ込めているんです。でないと種がべたべたになってしまうんです。
どら焼きもでも、なるべく周りの皮に水分が移らないほうが良いだろうという配慮から、寒天を加えた餡を使ってみたのですが、ちょっとそれが裏目に出て、皮と餡の相性を悪くしてしまったようです。ということで、まるっきり普通の粒餡にもどしてみたのですが、こちらのほうが、格段に相性が良いですね。皮と餡がしっくりきています。
これにバターを加えるわけですが、バターは余り使わない素材だけに正直なところ少し手間取りました。
最初は無塩バターを使ってみたんです。しかし、やはり無塩だと何か物足りないんですね。それで、少しずつ塩を加えてみました。そうすると、やはりバターの塩分と餡の甘みが、いい具合に絡みあい、美味しいんですね。
このお菓子の推薦文にもありましたが、「バタークリームの風味、塩味と小倉餡の甘さがベストマッチしているとおいしいとおもいます」とあるように、このバターの塩加減と餡の甘みがこのお菓子の醍醐味の一つでもありますので、ここが一番難しいところでした。
ということで、このバターの塩味をきめるのに、何度も何度も職人の女の子にバタークリームを作ってもらい、一番いいのではないか、という所までやってもらいました。最終的には、塩味と甘味、バターの風味と餡の風味、これらが一番いい具合に混ざり合うところまで持って行けたのではないか、と思います。
こちらは、先ほども申し上げましたが、誰にでも楽しめる味に仕上がりました。和菓子が好きな方、洋菓子が好きな方、誰でもいけると思います。興味のある方は、ぜひお試しください。
■ 第6月目
さて、先月完成しましたお菓子を考案者の方々に発送し、その感想が返ってまいりま した。参考になればと思い考案者の方々の了承を得て、お知らせしようと思います。
●「最高の羊羹」 発案者 あさのあまみ様より
待ちに待った「最高の羊羹」が届きました。ありがとうございました。
私は、糖尿病なのです。でも、伊奈かっぺいという人が言っていた「しょっぱくもね え味噌汁食って100年生きるより、うんめえ物食って50年生きる方がええ」に賛 同して、1日1回、朝食後に「朝のあまみ」(私の、ニックネームの語源です。)と 称して、ほんとうに気に入った和菓子を食べる、それを日課にしています。 昨日届いた羊羹を早速仏前に供えて、今朝頂きました。
「これが、最高の羊羹」
T屋の羊羹のように、硬い羊羹になるのかと思っていましたので、一瞬とまどいまし た。しかし、三松堂の煉羊羹に自信がありながら、あえて、硬い羊羹を予想する方が ナンセンスでした。
ただ、私の、羊羹の判定方法が、羊羹を一切、口に入れ、口を閉じたまま、ただ黙々 と約100回咀嚼をし、どろどろになったところで、大きく息を吸い込み、その息を 鼻から抜くときに、豆の香りを楽しみ、そのあと、どろどろになった羊羹を飲み込む ときの、喉越しを楽しむ。
そして、これからが、邪道だと馬鹿にされそうですが、適当に暖めた、牛乳を飲む。 良い羊羹は、後口に、変な甘ったるさが残らない。残ってはいけない。
本当に美味しい羊羹に限らず、和生菓子は、牛乳に合うのです。(お茶は、茶葉の善 し悪し、入れ方、お湯の温度等で、味が変わるので、私は、お茶では気に入った和菓 子は食べません。)
これが、私の、羊羹の判定方法、楽しみ方なのですが、今回の「最高の羊羹」は、こ の判定方法が、通用しなかったのです。「鯉の里」は小さいので、通用しないのです が、今回は、通常の大きさに切っても、どろどろになる前に、のどを越えてしまいま した。
しかし、すっかり喉を越えずに、大納言の粒子は、何とも言えず口の中に広がって、 暫く留まり、そして、すーっと消えていく。勿体ないのでできませんでしたが、この まま1本、ぺろっと食べてしまえそうな、今までの、美味しいと思った羊羹では経験 をしたことのない、本当に上品な甘さと、食感を味わわせていただきました。
採用されるとは思わず、簡単な気持ちで応募しましたが、これほどの羊羹を作り上げ ていただき、羊羹好き冥利に尽きます。「ほんまもん」の羊羹をお作り頂いたことに 敬意を表し、厚くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。今後とも、 よろしくお願い申し上げます。
●「バターどら焼き」 発案者 チワワン様より
本日届きました。ありがとうございました。本当に、本当においしかったです。パー フェクトです。思っていたとうりの味です。もう1つ食べたいなと思わせる大きさは さすがですね。しっとりとした餡とバターの塩味が、かわにあっていて本当においし かったです。
餡が苦手な人も、これなら食べられるしこんなに餡がおいしいものだと知らなかった と言っていました。
あと、私を含め少数ですがもう少しバターが多くてもいいかも?という意見もありま した。
あと余談ですが焼き芋にマーガリンをぬって食べたことがありますか?やはり甘さと 塩味が合っていておいしくて癖になるんです。味は全然ちがいますがそれを思い出さ ずにはいられないと言う人もいました。私たち素人の意見が参考になるかどうかわか りませんが何かプラスになればと思います。
あと私を含め全員一致の意見は、作った人の心が伝わってくる。本当に心がこもって いて食べるのがもったいない!でした。あっという間にたべちゃったんですけどね!
本当に楽しい企画に参加できて良かったですありがとうございました。
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企画に参加くださって本当にありがとうございます。「バターどら焼き」に関しまし ては、職人と話し合った結果、もう少しバターの量を増やそうということになりまし た。チワワン様貴重なご意見大変ありがとうございました。
■ 第7月回
半年にわたって続けてまいりました、「こんなお菓子が食べたい」ですが、よう やくお菓子の発送も終わりました。参加いただいた読者の皆様もお疲れ様でした。 本当に今、終わってほっとしています。
発表したときは本当に募集が来るだろうかと、はっきり言って夜も寝られません でした、と言うのはあくまでも文章上の表現ですが、募集はないかと夜中にコン ピューターで何回も確認をしていましたね。募集がなければこのメールマガジン を読んでいる友人数人にサクラを頼もうという、いけない考えが私の脳裏をよぎ ったのは紛れもない事実です。まあ、今考えてみれば別にサクラを頼まなくても 自作自演で十分なんですが。
しかし、そんな心配は必要ありませんでした。数人の読者の方がいろいろなアイ ディアを出してくださり、その中の二つも採用され、美味しいお菓子が出来上が りました。発案者の方たちも満足してくださったようですし、本当に良かったと 思います。
ちなみに報告しておきますと、このメールマガジン読者が総数約300人で、そ の中から今回応募していただいた方の数は4人。そして、その4人中2人の方の お菓子が採用されました。
職人のほうもいろいろと新しい発見があった様で、特に羊羹は、砂糖でこんなに も味に差が出るのか、と言ってました。昔からあるお菓子などは特に、常識で作 ってしまうことも多いので、こうした機会にいろいろ試すことが出来るのは、職 人にとってもいろいろ刺激になるようです。
さて、実はこれ第二回を企画しているところなんですが、第二回はもっと期間を 長くして、お菓子の募集はもちろん、選考まで読者の皆さんの意見を反映できれ ばもっと面白いかなぁ、と考えています。投票のページを作り、そこで皆さんが 食べてみたいお菓子に投票する。そしてその総合点が一番多いお菓子を作るとい うのはどうでしょうか。
それから、第一回でせっかく「最高の羊羹」を作ったので、もうこの際「最高の シリーズ」と題し、身近にあるお菓子の「最高仕様」を作っていけたら面白いか なぁ、とも考えています。もちろん、これも読者の皆様が今一番食べてみたい物 を作るという姿勢は変わりません。バターどら焼きのような、身近にないような お菓子も募集しますし、それと平行してこの「最高シリーズ」もやっていけたら と思っています。
さて、第二回に関して、「こういう事がして欲しい」というご意見がありました ら、ぜひ こちら まで連絡をください。可能なこと、不可能なこ と、いろいろあると思いますが、できるだけ皆様の意見を反映させていきたいと 思っています。第二回の開始は7月ころを予定しています。そして終わるのがま た2月ですね。というのも、2月はそれほど、工場が忙しくないので、お菓子作 りに集中できるんです。当店側の都合で本当に申し訳ないのですが、そこのとこ ろご了承ください。
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現在はこの企画は終了しております。ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。