つぶ餡とこし餡

豆のところでも、少し紹介をしましたが、当店では、つぶ餡とこし餡では使う豆の種類が違います。豆を使い分ける理由は、やはり我々が小豆から引き出そうとする旨みが、つぶ餡とこし餡では違うからなんです。

極端な話、この違いがあるからこそ、つぶ餡とこし餡、わざわざ二つの種類を作っているとも言えます。この引きだす旨みの違いは、作る過程に出てきますので、説明をしながら続けていきたいと思います。

□つぶ餡

つぶ餡は基本的に三つの過程を経て出来上がります。

最初に豆を煮ます。一晩水につけた小豆を釜に入れて煮るのですが、本炊きに入る前に二度ほど「渋きり」をします。これは、煮えている豆にびっくり水を入れ、その後お湯を捨てることによって行います。

これを二回繰り返した後、ようやく本炊きに入り、そのあと蒸らすわけですが、最初から最後まで2時間半かかります。

そして、砂糖と豆を交互に重ね、一晩寝かせます。

こうすることによって豆の芯まで甘味が浸透するわけです。

最後に炊き上げますが、ゆっくり1時間ほど火にかけ、水分を蒸発させて最後の三十分で砂糖と豆を良く混ぜ合わせ、出来上がりです。

□こし餡

こし餡は、つぶ餡と比べて少し作る過程が複雑になってきます。

こちらもまずは豆を煮ます。豆を釜に入れ、約2時間豆を煮るわけですが、こちらのほうは「渋きり」は1度しか行いません。

次に皮と「呉」に分けます。呉とは、豆の中身のことです。煮上がった豆を水流にさらすことによって、皮を取り除きます。

呉はそのまま水に溶け、その水ごと水槽の中にためられるのですが、これをしばらく待っていると、この呉が水槽の底に沈殿してきます。沈殿したら表層の水を捨てます。このときに豆の中の苦味、酸味、澱粉などが水と共に捨てられるので、純粋な呉だけが取り出されると言うわけです。これを2回繰り返します。

いくら表層の水を切ったからとはいえ、まだこの状態では呉が多くの水分を含んでいます。これを絞るのが次の仕事です。

麻の袋にこの呉を入れて、加圧気にかけます。まずは10分。そのあと、加圧機から取り出して、袋ごと呉を揉みほぐすのですが、圧力をかけられて硬くなった呉を袋ごともむのは一仕事ですね。そしてもう一度、最後に加圧機で水分を絞りきります。

最後に、砂糖、水飴、呉を釜に入れ炊き上げます。こし餡の場合、炊き上げるのにかかる時間は約2時間です。

これでようやく出来上がりです。こし餡をつくる場合、最初から最後までかかる時間は、約6時間というところでしょう。

さて、ざっとつぶ餡こし餡を作る過程を見てきましたが、これだけ違った過程をへて作るのは先ほども申し上げましたが、やはり引き出す旨みの違いがあるわけです。

それは作る行程をみてもうお分かりだと思いますが、つぶ餡は、豆自体の旨みを味わうために、なるべく形をくずさないよう丁寧に皮ごと炊き上げます。

一方こし餡は、口の中でさらりととける、その口当たりのよさを味わってもらうために丁寧に中身の呉を取り出すのです。

豆自体の味を楽しんでもらうために作るつぶ餡と、口解けのよさを味わってもら うためのこし餡。

一見、何気なく使い分けているだけのようなこの2種類の餡ですが、実は表現したいものが全く違っているんですね。

ということで、もし、これから餡を食べる機会がありましたら、つぶ餡こし餡どちらの餡がそのお菓子にあっているのか、考えながら食べてみるのも面白いかもしれませんね。

2007年5月7日(月)
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